財務局/東京都慰霊堂 慰霊に訪れる方の安全と耐震工事を両立し、歴史的建造物の価値を後世につなぐ。

歴史的建造物としての価値を保ちつつ、
現代の技術で耐震性を担保する。

墨田区の両国駅近くに佇む東京都慰霊堂。ここには、関東大震災及び東京大空襲の犠牲者(その数延べ16万人超)の遺骨が安置されており、年に2回(3月・9月)大法要が執り行われている。当時の日本を代表する建築家であった伊東忠太らの設計によって昭和5年に建設されたこの建物は、平成11年に東京都景観条例に基づき歴史的建造物に選定された。現在は建築後80年以上を経過し、耐震性の不足と経年劣化が著しいため、東京都財務局が監督し耐震補強と劣化補修工事を行っている。歴史的建造物の耐震補強・劣化補修工事にあたっては、さまざまなハードルが存在する。そのひとつが、既存の外観や内観を可能な限り損なわずに、現代の技術を活かして工事を施さなければならないこと。例えば、内装のデザインやレリーフはそのままに、窓の開口部を少しだけ小さく設計して耐震性を担保する技術や、照明の中の電球をLEDに交換し、見た目の装飾は変わらぬまま省エネルギー化にも対応している。

耐震工事と参拝を両立する、
徹底された安全管理。

東京都慰霊堂の工事の特徴であり、最も大きなハードルは、通年に渡り参拝者が慰霊堂を使用できる状態を保ちながら施工を進めていかなければならないことだろう。都の職員として、すべての現場において大切にしている要素は3つ。一つ目は安全管理、二つ目は工程管理、三つ目は品質管理だが、東京都慰霊堂の工事に当たっては、工事期間中に一般の参拝客が訪れるという点から、一際「安全管理」を重要視している。まず、施工工程は3工程に分けられ、工程ごとに工事範囲と供用範囲が明確に区分されている。万が一にも、参拝客が工事範囲に立ち入る危険がないように工事計画が立てられているのだ。また、毎年3月と9月に執り行われる大法要の際は、内部の仮設足場をすべて撤去して行事を優先している。実際の施工は民間企業によって進められているが、工事に携わる全員が施工工程とその進捗を把握できるよう打ち合わせを徹底し、危険が発生しないよう気を配っている。

専門家や民間企業との調整も
大切な東京都職員の仕事。

東京都慰霊堂のような歴史的建造物の場合、先述したような様々なハードルや配慮しなければならない点が多い。このような場合、多くの学識経験者の指導を仰ぎながらプロジェクトを進める必要がある。都の職員が担うのは、プロジェクト全体のマネジメントはもちろん、専門家の先生や設計・施工を行う民間企業、地域の方々等、多くの関係者とのコミュニケーションが円滑に運ぶよう、調整を図っていくことだ。また、専門家の意見を正しく理解し事業に反映させていくためには、技術について学び続けることも大切だ。都の職員一人あたり、担当する現場は平均4~5箇所。ひとつの現場を二人の職員が担当してプロジェクトを進めていく。耐震補強工事が必要とされている建造物は他にも多数存在し、数年間に渡る長い工期の中で蓄積された経験や培った技術力は、今後更に活かされていくはずだ。

※掲載内容につきましては、2014年11月時点のものです。